008 プロローグ 08

「バ・・・バンド?」

咳がおさまってから、目に涙を浮かべたまま、繰り返した。

「そう。バンド。これから立ち上げる」
「そ、それに、俺が入るんすか?管理系とか、マネージャーとかじゃなくて?メンバーとして?」
「そう。そういうこと」

あまりの展開に、頭が追いついてこない。勝算は、見通しは。

「え、それって、クリスタルから、デビューの確約をもらってるってことっすか?」
「は?あるわけないじゃん、そんなの。まだデモテープもないし」
「え、じゃあ、どっかのプロダクションが推してくれるとか?」
「いや、そんなんないから。フリーだから。」
「いやいやいやいや、どういうことっすか。まったくわかんないっす」
「なんでだよ。難しいことないだろ。バンドつくって、曲つくって、地道にライブハウス出て、武道館を目指す、ってだけの話じゃん」

確かにわかりやすい。が、それが自分の未来だと思うと、とたんにまったくわからなくなる。

「曲は、最初のいくつかは俺が書く。もう準備もしてある。それでデモテープをつくって、歌入れして、他のメンバーを探す。メンバーが揃ったら、リハして、音源つくって、ステージを組む。わかった?」
「せ、生活は?どうするんすか?」
「バンドが売れるまでは、フリーの制作ディレクターとして仕事を受ける。プロデューサーっぽい仕事もあるかもな。それを俺とオマエの2人でやっていく。バンドに支障が出ない範囲で」

意外すぎて理解しがたい。けれど、人生を預けようと決めた相手が、そうしようといっている。断る選択肢はもともとない。とりあえず生活に困ることはなさそうだし。

「わ、わかりましたけど。具体的に何をどうすりゃいいのか…」
「とりあえず、面接のスケジュールをとっとと組んで、会社を辞めます、ってことだけは言っといたほうがいいな。そいで、6月いっぱいまで在籍して、移籍しないで辞める、ってことで」
「今後のことはなんて言うんですか?キバさんとバンドやる、って言うんですか?」
「いや、それはまだやめとけ。キバが独立してフリーになるから、それについてく、ってことにしとけよ。いろいろ波紋を呼ぶこともあるかも知れんし、フツーにやるだけじゃないから」

まだ何か考えているのか、このひとは。