005 作詞の全体構成

課題曲『世界に一つだけの花』は、ひとりひとりの個性を大切にして、自分らしく生きていこう、というメッセージソングですね。それがすなわち、最も作者が伝えたいメッセージに他なりません。この作品の主題そのものです。では、そのメッセージをどう伝えるか。これが、本稿で考える、作詞の全体構成につながってきます。多くの他の作品と同じように、この曲もAメロ、Bメロ、Cメロ(サビ)の三部構成。そして、それぞれに異なった役割が与えられています。

では、ここでヨシオくんに問題です。「花屋の店先」で始まるAメロは、この作品においてどのような役割を果たしているでしょうか?

「えっと…自分らしく生きることはすばらしいことなんだ、っていうことに気づくきっかけになった場面を描いているわけだから…主題の導入部っていうかんじ?」

素晴らしい。完全な正解です。ヨシオくんの言うとおり。Aメロの役割は「導入」、つまり、作品で表現したいことの前提となることがら、この作品の舞台となるのはこういう景色です、ということを示すこと。作品を描くためのキャンバスを用意する、といえるかも知れません。ヨシオくんが気づいたように、「花屋の店先」という、目に見える風景をまず示すことがスタートラインです。

それでは、Bメロは?

「んー、Aメロで描かれた風景から、自分や他のひとたちの生きかた、ありかたに疑問を持った、ていう「ヒラメキ」について描いているような気がする」

これもまさにそのとおり。Bメロの役割は「展開」。Aメロで導入した内容を、Cメロの主題につなげるための、重要なポジションです。花屋の店先にいろんな花が咲き乱れている風景を、Aメロで提示しました。そしてまさにそのことから、作品の主題につなげていくわけです。

そしたらもう、Cメロは言うまでもないよね、ヨシオくん。

「Cメロは、伝えたいメッセージをきちんと伝えきる場所!」

そういうことです。Cメロは、作品の中で最も強いメッセージを発するエリア。作品の中で伝えたいことを、おもいっきり言葉で描き切ること。Aメロで導入し、Bメロで展開された内容を受けて、Cメロは主題を表現するいちばんの見せ場です。

以上が、基本的な作詞の全体構成、テンプレートといえるでしょう。導入、展開、主題というみっつの役割を、それぞれのメロディパートに当てはめる。現代のリリックは、こういう構成で描かれていることが多いです。コレを知っておくと、作詞の方法がおぼろげながら見えてくるような気がしませんか?