004 作詞にルールはあるのか

作詞の仕方を具体的にお話しする前に、作詞にまつわる永遠の命題について考えてみたいと思います。すなわち、作詞に決まったつくりかたやルールはあるのか、ということです。

ぼくは、ルールはあると思います。こういうふうに書けばちゃんとできる、という枠組みは、あります。その意味で、ルールよりテンプレートといったほうが正しいでしょう。

ただ、ここで問題なのは、それに縛られるべきかどうか、そのテンプレートはどのくらい絶対的なものなのか、それを逸脱することは絶対に許されないのか、という点です。これがまさに作詞家の個性というモノでしょう。テンプレートは確かにありますが、それに縛られると定型的でおもしろみのない作品ばかりになりかねません。かといってテンプレートを大きく逸脱すると、そもそも作詞として成立しない恐れもあります。テンプレートとどう付き合うのか、これがまさに作詞家の腕の見せ所、個性の発揮ポイントです。

このことは、作曲におけるコードワークとよく似ています。C、F、Gだけでそれなりに展開力のある曲をつくることはできるはずです(key=C)。けれど、GをG7にしてみたり、FをDm7にしてみたりと、少し逸脱したアレンジはたくさんあります。そしてそのことが、それぞれの作品の個性を際立たせているわけです。

つまり、テンプレートを理解したうえで、それにとらわれない。テンプレートを知ることで、視野が狭くなっては意味がありません。広大な作詞の世界における、ひとつの道標だと考えればいいと思います。

それでは、具体的に曲名を挙げて、作詞のテンプレートについてお話ししましょう。題材となるのは、SMAP「世界に一つだけの花(作詞:槇原敬之)」です。まごうことなき平成の名曲。知らない人はたぶんいないですよね。ぼくは若い人に作詞を指導するとき、必ず最初にこの曲を使います。そして、これと同じように書け、と言います。この曲は、いわゆる作詞のテンプレートを、あまりにも美しく具体化していると思うから。教科書の最初に載せたいリリックです。

花屋の店先に並んだいろんな花を見ていた
ひとそれぞれ好みはあるけどどれもみんなきれいだね
この中で誰が一番だなんて争う事もしないで
バケツの中誇らしげにしゃんと胸を張っている
それなのに僕ら人間はどうしてこうも比べたがる?
一人一人違うのにその中で一番になりたがる?
そうさ 僕らは世界に一つだけの花 一人一人違う種を持つ
その花を咲かせることだけに一生懸命になればいい

世界に一つだけの花(作詞:槇原敬之)

読み返すだけで、作詞のあるべき構成が見えてきませんか?次項からは、もう少し詳しく、この曲のリリックについて考えてみようと思います。