003 いまさら自己紹介

それではここで、少し自分のことをご紹介します。

筆者、ニシバタ(本名ではありません。この連載のためのペンネームです。事務所から筆名を命じられました)は、10代の頃から自分で曲を書きためていて、20代半ばでロックバンドのギタリストとしてデビューしました。ただ、事務所の事情で長続きせず。バンドは解散し、事務所との契約も外れて(というより事務所そのものが消滅)、途方に暮れていたころ、所属していたレコード会社の方から、オマエの曲を別のアーティストに歌わせたい、というオファーをいただきました。

ぼくらのバンドは、50曲以上の作品をつくっていました。デビュー前、それらをすべて提出して選び、ミニアルバムを2枚ほどリリース。その後解散しましたが、リリースされていない曲が30曲以上あり、それを使いたいという提案を受けたわけです。

願ってもないオファーに感動して、もちろんぜひ使ってください何ならもっとたくさん曲はありますよ、ということで、弾き語りの鼻歌だけのものまで100曲以上を提出。運よくいくつか採用され、作詞家、作曲家として本格的に活動するようになります。気がつくと、そこから15年。ニシバタも立派なアラフォーです。所属事務所では最古参。作詞部門の統括ディレクターという肩書までついてしまいました。

仕事内容は、若手の育成と、作品のチェック。出版社でいう「校閲」です。プロダクションから外部に提出する作品に、言い回しの誤りや不適切な表現が含まれていないかどうか、確認する役割です。レコード会社から直接、校閲を頼まれることもあります。

この、チェックというのが肝心。たとえ、長らく第一線で活躍する大御所であっても、作品に誤りがあることは珍しくありません。セルフプロデュースでがんばってきたロックバンドのボーカルが自由に書いた作品なら、ほとんどの場合で修正が入ります。

曲中の一人称がいつのまにか「ぼく」から「俺」に変わっている、とか。

1曲の中に「ぼくたち」と「ぼくら」が混在している、とか。

2番の途中まで夏だったのにいつのまにか冬になっている、とか。

「暁の夜」みたいな日本語として矛盾のある言い回しとか。

そういった修正点をみつけて指摘する。場合によってはどう直せばいいか、どう書けばいいか、作詞者と一緒に考える。そういう仕事をしています。もちろん、まだまだ自分でも書きますけど。

こういう仕事が存在するということは、それだけ作詞が難しいことの裏返しに他なりません。やはり作詞は、特別な世界なんでしょう。けれど、作品を仕上げたとき、作品を認められたときの喜びは、一度経験するとやめられませんよ。